医学部小論文の書き方を解説します!

公開日:2021.08.23 更新日:2021.11.08
医学部小論文の書き方を解説します!

医学部の試験内容には「小論文」の科目が課される大学があります。数学や物理など理数系の科目の勉強が中心の医学部志望生にとっては、頭が痛い科目という人も多いのではないでしょうか。そこで今回は、医学部の小論文の書き方について解説します。小論文の基本的な知識や出題形式を知りたい人、何から対策を始めたら良いか分からない人はぜひ参考にしてくださいね。

小論文で問われることとは

医学部の小論文は、大学ごとに問われる能力や見られる素質などが異なります。事前に受験する大学のアドミッション・ポリシー(入学者の受け入れ方針)をチェックして、どのような素質を見る目的で小論文が課されているのかを理解した上で対策をしましょう。ここでは医学部の小論文で一般的に求められる能力や知識についてまとめてみます。

 

論述力

論述力とは、物事を論理的に述べる力のことです。設問や、自分で設定した「問い」に対して、「答えとなぜそう考えたのかの根拠をセット」で述べることで、筋道が通って読みやすく説得力のある小論文になります。

論述は、闇雲に書き始めるのではなく、初めに「問い」「主張」「その根拠」を組み立ててから書くのがポイントです。過去問を使った練習では、読み手(採点者)にも1回で伝わるように筋道が通って分かりやすく書けているかに注意して見直しを行いましょう。

 

医学の知識

国立大学医学部の小論文は、提示された文章(英語の場合も多い)や図表などの統計データを読み取って要約したり、その事項について自分の考えを述べたりする、「情報読解+論述型」の問題が比較的多い傾向にあります。

つまり、問題分で提示された書籍からの引用文やデータ中の医学、看護学、理学・作業療法学などに関する専門用語を理解しているかが問われます。

また、私立大学医学部で多いのは「○○についてあなたの考えを述べなさい」という自由記述型の小論文です。この場合も、医学・医療に関する視点で論述しているかが意欲を示す書き方として重要なポイントになります。

 

分析力・読解力

医学部の小論文では、文章から筆者の主張を正確に理解する能力や、統計データを科学的に分析する能力が問われます。自分の主張だけでなく、提示された情報を正しく要約し、主張に繋げられているかがポイントになります。

 

人間性

保険医療の従事者を目指す者として倫理観(道徳観や善悪の基準についての考え方)の高さや相手を尊重し気持ちを推し量る能力はとても大切です。医療を志す者として一緒に学びたいと思える人物か、という人間性も問われています。

小論文では客観的な視点、物事を多角的に見ているという姿勢が感じられるような文章を心がけ、倫理観の欠如や他者を軽視するような表現が見られる主張をしないようにしましょう。

 

コミュニケーション能力

小論文の中で問われるコミュニケーション能力とは、出題の意図を理解し、設問に対して的確に答えられる能力です。読み手のことを考えた分かりやすい文章、相手に伝えようという意思のある書き方の文章でなければ、いくら知識があっても評価は得られません。

また、文末表現(~だ、~です)や用語の表記方法が統一されているか、句読点の位置は適切かなど、基本的な文章のルールについても見直し時に確認できるよう知識として身につけておきましょう。

 

出題形式の違い

医学部の小論文は、国立・私立や学科によって出題形式に違いがあります。それぞれの出題形式の特徴と出題される傾向の多い大学や学科について解説します。

 

テーマ型

テーマ型は、「○○について考えを述べなさい」といった簡潔な設問型の出題形式です。主に私立大学の医学部での出題が多く、医学や医療に関する題材か、一般的なキーワードに関する題材かの2パターンあります。

一般的なキーワードの場合でも、書き方としてはできるだけ医学や医療の話題に繋げて論述することで、医学を学ぶ意欲を示すことにつながります。テーマ型の大学の小論文対策は、医学や医療に関する知識だけでなくニュースで取り上げられた話題など幅広い分野にアンテナを張って日頃から情報をインプットする癖をつけておくことが重要です。

 

資料読解型

資料読解型は、書籍の引用文や図表などのデータを読んで、要約や自分の考えを述べるタイプの出題形式です。国立大学の医学部での出題が多く、英文の資料で出題する大学もあります。また、私立大学でも各校で特色のある文章読解型の出題を行う大学があります。

資料読解型の大学の小論文対策は、志望大学はもちろん、同じ出題形式の大学の過去問になるべく多く取り組み、まとまった文章・図表を読みとる力、英訳力、要約力などを磨いておくことが重要です。

 

現代文型

現代文型は、小説やエッセイ、手記、論文などの文章を読んで設問に回答する出題形式です。一部の国立・私立大学で出題されます。

小論文よりも国語の現代文の内容に近く、文章の要旨を読み取る力、決められた字数内で分かりやすくまとめる文章力などが主に求められます。

 

小論文の見直しチェックポイント

次に、小論文の見直しをする際に心がけるチェックポイントを解説します。

 

誤字脱字と常体(だ・である体)への統一のチェック

文章力を評価するにあたって、単純な誤字脱字や文体(文末表現)の統一は最も基本的なポイントです。読みにくい文章は、論述力や、相手に自分の考えを分かりやすく伝えるコミュニケーション能力が低いと判断されやすくなってしまいます。

小論文の文体は、原則的には常体(だ・である体)を使います。客観的な印象を与え、読み手に自分の考えを簡潔に伝えられるからです。ただし、設問内に「敬体(です・ます体)で書きなさい」とある場合は指示に従いましょう。また、受験する大学に関する設問など特殊な条件の場合は敬体の方がふさわしい場合もあるので、設問に応じて書き方は柔軟に判断しましょう。

 

縦書き・横書きで記載方法が異なる文字

大学入試の小論文の解答用紙は、横書きの原稿用紙の場合が多いです。横書きと縦書きで書き方に大きな違いはありませんが、数字とアルファベットのみ注意が必要です。

数字は横書きの場合は算用数字(1、2、3…)を使うようにしましょう。また、アルファベットの小文字と数字は

me di ci ne
20 21

このように1マスに2文字を使います。

 

主観的な表現は避ける

小論文では基本的に主観的な表現(「わたしは~~と思う。」「~~と考える。」など)は避けましょう。資料読解型の出題形式では資料に基づいた客観的な主張になるようにします。また、テーマ型や「○○についてあなたの考えを述べよ」という出題形式、設問に関しても、できるだけ多角的な考察や知識、データ(事実)などを用いて客観的な根拠を挙げるよう心がけましょう。

ただし、「筆者の主張に対してあなたの意見を述べなさい」や「あなた自身のこれまでの体験を挙げて述べなさい」など自分自身の考えを明確に求められている場合は主観的な表現で構いません。

 

一貫性を意識する

小論文に限らず論述で大切なのは、主張の一貫性です。小論文の見直しでは、初めと最後で主張が変わっていたり、結論が曖昧になっていたりしないかをチェックしましょう。

 

医学部小論文に向けて対策するには

ここでは、「医学部の小論文」に絞った具体的な対策方法をまとめてみます。

 

医学・医療に関する知識を得る

出題されやすいキーワードの知識はもちろん、新聞・ニュースに日頃から触れておくことが大切です。医学・医療に関する知識の引き出しを増やしておくことで、様々なテーマに対応しやすくなります。

また、医学・医療に限らず、ここ1~2年の時事用語もチェックしておきましょう。特に問題集に掲載されていないことも多い受験時の年度の時事用語は忘れずに頭に入れておきましょう。

 

参考書・問題集は必ず確認する

最も基本的な対策は参考書・問題集(過去問)の確認です。まずは自分の志望する大学の出題傾向を把握しなければ対策も的外れになってしまいます。出題形式をチェックした上で、その形式に近い小論文の練習ができる参考書や問題集を活用するようにしましょう。何度もその書き方を繰り返すことで読解力や論述力がアップしていきます。

 

表現力や独自性を日々鍛える

主張を簡潔に分かりやすく伝えるための表現力や、自分の得意分野の論述を磨くことも重要です。表現力は文章の読み書きを繰り返すことで鍛えられていきます。表現力を身につけるには、可能なら言葉・文章の専門家である学校・予備校の教師や講師に添削をお願いするのがとても有効です。改善点を的確に理解して効率良く文章力を上げていくことができます。

 

過去問題例を見てみよう

最後に、医学部の小論文の過去問題例をいくつか紹介します。

 

【テーマ型】の小論文過去問題例

テーマ型の小論文は、一般的な現代社会用語や時事用語に関する設問が多く出題されます。また、学校によってはテーマの傾向や評価する能力を開示している大学もあるので事前にしっかりとチェックしておきましょう。

(過去問題例1)
「寛容の精神」について、800字程度で論じなさい。
[2021年度 杏林大学医学部 一般選抜(2次試験)]

 

(過去問題例2)
日本が誘致を目指している2025年万博のテーマは、「いのち輝く未来社会のデザイン」~Designing Future Society for Our Lives~。サブテーマとしては、(文中省略)あなたが大阪万博で実現したい医療について述べなさい。
[2020年度 関西医科大学 一般入学試験(後期)]

 

【資料読解型】の小論文過去問題例

資料読解型の小論文は、「日本語資料」か「英語資料」で対策が大きく分かれます。まずは志望大学の過去問や出題傾向をしっかりチェックしてから対策に臨みましょう。

(過去問題例1)
出生前(しゅっせいぜん)診断に関する以下の【事項説明】、【書籍からの引用文章】、【図】、【表】を読み、問に答えなさい。
(事項説明、引用文、図表省略)
問 あなたの考えを以下の(1)(2)をあわせて 800 字以内で述べなさい。
(1)「出生前診断」の現状と課題について、【事項説明】、【図】、【表】から読み取ることができる内容を引用し、さらに【書籍からの引用文章】における著者の主張を読み取ってまとめなさい。
(2)その上で、出生前診断の倫理的問題に関するあなたの考えを述べなさい。
[2021年度 弘前大学医学部保健学科 一般選抜(前期)]

(過去問題例2)
以下の英文を読み、質問に答えなさい。
(英文省略)
問1.下線部①を日本語に訳しなさい。
問2. racism について、アメリカでは、どのようなことが過去に起こってきたのか、要約しなさい。
問3.climate denial と coronavirus disease 2019 (COVID-19)について、正しい解決に到達する前に、今後どのような事態が起こりうると筆者は懸念しているのか。それぞれについて 20 字以内で書きなさい。
問4.問題の解決に向かうための科学者の役割について、筆者はどのようなことを科学者に提言しているか要約しなさい。
問5. 科学が政治に及ぼした影響や功罪について、あなたはどう考えますか。racism、climate denial、COVID-19 以外の例を用いて 200 字以内で書きなさい。(文章省略)
[2021年度 東北大学 医学部医学科 AO入試(総合選抜型)Ⅲ期]

 

【現代文型】の小論文過去問題例

現代文型の小論文は、文章の要約や言い換えなど国語的な読解力が求められます。合わせて、文章を読んだ上での自分の考えを簡潔にまとめる設問も多いです。

(過去問題例1)
次の文章は瀧本哲史著の「僕は君たちに武器を配りたい」(講談社)の一部である。この文章を読んで以下の設問に答えなさい。
(文章省略)
第1問 下線部「今日の真実」を漢字2文字の語句で言い換えなさい。
第2問 下線部「このあみの目の中で得な位置にいる人と、損な位置にいる人との区別があるということだ。」を本文中の語句を用いて言い換えなさい(40字以上50字以内)。
第3問 「人間らしい関係」を築くことの意義は何か。あなたの中学・高校生活における具体例を踏まえて考察しなさい(400字以内)。
[2021(令和3)年度 藤田医科大学医学部 ふじた未来(総合型選抜)]

 

まとめ

医学部の小論文は、その他の教科と比べて対策する時間が少なくなりがちな科目です。しかし、大学によっては決して低くない配点が設定されており、無視できない科目でもあります。

重要なのは、まず志望する大学の小論文の出題形式と傾向、採点のポイントなどを早めにチェックしておくことです。傾向や書き方が分かれば対策が具体的に立てられ、受験勉強の中での配分やスケジュールも組みやすくなります。

この記事をシェアする
【免責事項】※このサイトの掲載情報については独自に収集した内容が基になっていますので、最新情報や詳細は、医学部予備校の公式ホームページをご確認ください