医学部の入試は非常に難関で狭き門です。医学部の毎年の合格者は、現役合格以外に、一浪やそれ以上の多浪生、そして社会人などの「再受験生」も多くを占めています。今回は、医学部の再受験とはどんな受験方法なのか、メリットと注意点を詳しく解説します。最後に、大阪で医学部の再受験に強い予備校5校の特徴についてもまとめていますので、再受験を検討している人は予備校選びの参考にしてくださいね。
目次
医学部を再受験する方法は、「一般試験を再受験する」方法と、「学士編入試験を受ける」方法の2種類があります。それぞれのメリットや注意点についてお伝えします。
一般試験の再受験は、医学部の入試をもう一度受験する方法です。大学在籍中に受験することもできますし、大学卒業後や、中退して再受験する人もいます。もちろん、高卒の資格がある人なら社会人でも受験できます。
一般入試の再受験は、多くの再受験生が選択する方法です。現役生や浪人生と同じ受験内容なので予備校や参考書などで勉強方法の対策が立てやすいことと、高校を卒業した人なら誰でも受験できるのがメリットです。
一般入試を再受験する場合、現役生や浪人生と戦うための覚悟や自己管理の徹底が必要不可欠です。年齢や環境の違いから、勉強時間の捻出やモチベーションを保つのが難しい人は仕事をやめて受験勉強に集中する人もたくさんいます。現役の人たちと比較して年齢的な部分を加味すると相当な覚悟が必要になってきます。
また、「再受験に厳しいか寛容か」大学ごとに傾向がある点にも注意しましょう。
2018年に東京医科大学で、再受験生や多浪生・女子受験生に不利な入試を実施していたことが発覚し、これを発端に、文科省の調査で複数の国公立・私立医学部で同様の不正入試が判明しました。現在は不正入試をしていた大学は入試内容を改善しており、年齢や性別でスクリーニングするなど不利な入試を禁止するルールを取り決めています。
このように、現在は医学部再受験生にとって年齢が理由で不合格になるケースは改善されていると言えますが、もともと再受験生の合格率が高い大学もあります。
医学部再受験に寛容な大学かどうかを調べるには、合格者全体に対して20~22歳以上の合格者の割合、再受験生の割合をチェックしてみましょう。年齢別の合格者内訳を公表していない大学は、再受験に厳しめと言われています。
学士編入とは、大学を卒業した人と他大学在学中の人が、医学部に編入するための制度です。編入学は、医学を学ぶにあたって明確な目的意識や強い志を持つ人材が求められます。編入試験は共通テストを利用せず、大学ごとに独自の試験が実施され、合格すると医学部で2年次に編入して学ぶことができます(大学によっては3年次や1年次後期への編入もあり)。
学士編入は、一般入試に比べて必要な科目数が少ない点がメリットです。学科試験は自然科学系、生命科学系の科目がメインで、英語や数学などがプラスされる大学もあります。また、学科試験の成績だけでなく、大学の専攻や社会人としての経験、面接や小論文などで総合的に評価されるので、学科試験以外の項目が得意な人、強みがある人に向いているとも言え、受験者は社会人も多くなっています。
国公立大学(2022年度)
大学名 | 編入学年 | 募集人数 |
旭川医科大学 | 2年次 | 10名 |
北海道大学 | 2年次 | 5名 |
弘前大学 | 2年次 | 20名 |
秋田大学 | 2年次 | 5名 |
筑波大学 | 2年次 | 5名 |
群馬大学 | 2年次 | 15名 |
東京医科歯科大学 | 2年次 | 5名 |
富山大学 | 2年次 | 5名 |
金沢大学 | 2年次 | 5名 |
福井大学 | 2年次 | 5名 |
浜松医科大学 | 2年次 | 5名 |
名古屋大学 | 2年次 | 4名 |
滋賀医科大学 | 2年次 | 15名 |
大阪大学 | 2年次 | 10名 |
神戸大学 | 2年次 | 5名 |
鳥取大学 | 2年次 | 5名 |
島根大学 | 2年次/3年次 | 5名 |
岡山大学 | 2年次 | 5名 |
香川大学 | 2年次 | 5名 |
愛媛大学 | 2年次 | 5名 |
高知大学 | 2年次 | 5名 |
山口大学 | 2年次 | 10名 |
長崎大学 | 2年次 | 5名 |
大分大学 | 2年次 | 10名 |
鹿児島大学 | 2年次 | 10名 |
琉球大学 | 2年次 | 5名 |
私立大学(2022年度)
大学名 | 編入学年 | 募集人数 |
岩手医科大学 | 3年次 | 4名 |
東海大学 | 1年次(後期) | 15名 |
北里大学 | 1年次(後期) | 若干名 |
※ここに挙げた大学名、編入学年、募集人数は、2022年1月時点のものになります。実際の編入学実施要項や試験内容は、大学のホームページで必ず確認してください。
学士編入の選抜内容は
の2パターンが主流です。ただし最近は①の1次選考が書類審査のみの大学は少ない傾向にあります。また、群馬大学(2020年実績)のように、1次が小論文、2次が面接と学科が必要ない大学もあるので、大学によって学科試験と面接・小論文のウェイトが異なる点に注意しましょう。
学科試験の内容は
の3パターンが主流です。
どの大学も英語と生命科学が主要科目になります。「生命科学」とは、高校で学ぶ基本的な生物学を基盤として、細胞生物学、生化学、分子生物学、生理学から遺伝学、発生生物学、免疫学まで幅広い分野が出題されます。学科試験が少ないといっても、生命科学の科目で求められるのは高校卒業以上、大学2年程度のレベルになるので特に文系学部出身の人は入念な対策が必須です。
学士編入は基本的に学士取得または取得見込み者が対象ですが、学士でなくても受験できる大学もあります(筑波大学、群馬大学、大分大学、東海大学、2020年実施試験において)。それぞれの大学ごとに出願資格が異なりますので、募集要項をチェックしてください。
学士編入は、一般入試よりも募集人数が少なく、非常に狭き門であることは否めません。学科試験の負担が軽いメリットがありますが、そうした大学は受験者が増えてさらに難関になりやすいというデメリットがあります。
また、大学ごとに科目試験と面接・小論文のウェイトが大きく異なるため、自分の得意不得意に合わせた受験校選びも大切です。
医学部の再受験にあたって重要なことは、自分のペースに合わせた柔軟な勉強計画を立て、それを実行できる環境を整えることです。現役の人が受験に強いのは当たり前のことです。社会人から医学部の受験を目指すとなれば勉強時間の確保、環境、モチベーションを保つための工夫が必要不可欠となります。
再受験すると決めたら、まずは現役生・浪人生との違いを理解して、これまでの学習環境を見直す必要があります。そのためには、自分の強み・弱点を的確に把握して、試験に備えて逆算して勉強のスケジュールを立てましょう。
また、自分に合った受験校や参考書を調べるなど様々な情報収集も必要です。
自分の強み・得意分野が分かったら、それを活かせる大学を見極めることで合格の可能性を高められます。これまでの大学での専攻や社会経験などから、得意な科目試験・小論文の形式などを大学ごとの試験内容と照らし合わせて、自分がより少ない負担で集中して対策できる大学を見つけましょう。
再受験にかかわらず医学部の入試では面接試験がほぼ必須です。そのため、面接対策も必ず必要になってきます。面接は人と対面して行うため、独学では対策しにくい部分です。参考書などでよくある質問の傾向や解答例は掴むことができますが、実際に実技でシミュレーションしておくのがベストとなります。「再受験をした理由」は再受験生がほぼなからず聞かれる項目になるので、医学を志すきっかけや学ぶ意欲を伝える練習をしておきましょう。
小論文については、すでに大学入試で経験している人も多いと思いますが、医学部独自の出題形式を把握した上での対策が重要になってきます。英文での出題や医学用語・データを読み取る力が求められるなど、大学によって独自の傾向がありますので、受験校の試験内容は早めにチェックして対策を始めましょう。
このように、医学部の再受験には自己分析に基づく適切な勉強内容を含めたスケジュール立てや、志望校・試験内容の情報収集、面接・小論文対策などを並行して行う必要があります。そのため、やみくもに学科試験の勉強を始めてしまうと対策が十分にできないまま受験になるケースが多発します。
独学でこれらの対策を行い、またモチベーションも維持し続けられる人は良いですが、難しい場合は医学部予備校に通って合格を目指したほうが効率的でしょう。自分の弱点と正面から向き合い、講師や先輩といった第三者のアドバイスを参考にしながら改善できます。
次に、再受験に強い予備校を選ぶポイントについて解説します。
再受験者が予備校を選ぶときに最も重視したいのは、「再受験の指導・合格実績があるか」という点です。社会人で働きながら再受験合格を目指すという人は、1日中予備校の授業を受ける現役生と同じスケジュールはこなせません。合格のために何が必要で、達成するためにどんなスケジュールで勉強をすすめるのか、社会人は独自のカリキュラムや自己管理方法が必要なのです。
予備校で社会人コースなど再受験生用のコースがあるなら、希望している大学の試験対策や基礎に強く弱点を克服するための講師陣が揃っていることが多いので、まずは体験授業や相談会に行ってみるのがおすすめです。
大学を卒業した人でも、社会人になってからはどうしても勉強から遠のいてしまいます。医学部の再受験にあたっては、英語や理系の科目をまた1から学び直さなければならない人も多いかもしれません。
現役生や浪人生と戦えるだけの学力を身につけるには、現役生以上の学習環境が望める予備校を選びましょう。再受験対策では、大手予備校でよくある集団授業形式よりも、個別指導や少人数授業形式の予備校がおすすめです。
講師との距離が近く、マンツーマンやそれに近い形式で、丁寧なフォローやサポートが望めるかが大きなポイントになります。講師の数は十分で質問や個別相談がしやすい環境か、少人数授業は1クラス何人かなどをしっかりチェックしましょう。
学士編入を受験するなら、生命科学などより専門性の高い学科の勉強が必要です。予備校ごとに学士編入希望者に対する対応についてもチェックしておきましょう。
大阪に拠点や校舎のある医学部予備校の中で、再受験に強い予備校を5校ピックアップしました。これから医学部再受験を目指す人は、予備校選びの参考にしてくださいね。
医進の会は、完全個別指導にこだわった大阪の医学部予備校です。2人に1人が医学部合格という高い合格率が強みです。
再受験生や多浪生も歓迎している校風で、1から勉強しなおすという人にも勉強の仕方、復習の仕方から丁寧に指導してくれます。一浪以上の多浪生の合格者の声では、高校時代やこれまでの予備校での勉強方法を見直し、個別指導と個別カリキュラムで弱点部分を補強しながら集中して勉強できたという声が多いです。
オンライン個別授業にも完全対応しており、大手予備校のような講師の授業の録画ではなく、双方向のコミュニケーションをしながら行うリアルタイム授業をオンラインでも変わらず受けられるのが特徴的です。リアルタイムなので校舎で受ける授業と同じように質問もできます。近くに医学部専門予備校がないという人にもおすすめです。
メビオは、大阪に拠点を置き、42年の長い歴史のある医学部専門予備校です。その長い実績で医学部受験のノウハウが蓄積しており、受験情報に強く再受験や学士編入にも対応しています。
再受験生には高卒生本科(高卒生・社会人向けコース)があり、志望大学や学力、自習時間の量、体力面などさまざまな条件を考慮して授業を組み立ててくれます。また、私立医学部の併願のための出願スケジュールをプランニングしてくれ、宿泊手配やホテルでの直前授業なども行っているので、一般入試で私立を併願したい人にもおすすめです。
大阪医歯学院は、「高卒生・再受験生 Ⅰ類コース」で医学部の再受験生に対応しています。数少ない再受験生の合格実績を掲載している予備校でもあります。生徒の状況や志望校に合わせて、個別指導とクラス授業を組み合わせるなどオリジナルのカリキュラムを提案してくれます。
再受験生に向けては、編入試験や社会人入試の対策ポイントと情報を提供しています。再受験で重要な面接対策もきめ細やかに指導し、再受験や多浪の人もたくさん通っているため仲間も見つけやすくモチベーションの維持もしやすい予備校です。
ロゴスは、関西の医学部受験に強く、4私大の合格実績が多数あります(関西医科大学、兵庫医科大学、大阪医科大学、近畿大学医学部)。
再受験専用の指導も得意で、社会人・既卒生向けの完全オーダーメイドの個別指導が可能です。少ない時間の中で、効率的に勉強に取り組む必要のある社会人に考慮したカリキュラムを、学力に応じたオリジナルで作成し指導してくれます。これまでの経歴から強み、弱みを的確に把握して、効率的に最短での合格を目指せる予備校です。また、独自性の強い学士編入の面接対策もできるのが特徴です。
メディカルラボは、河合塾グループの医系専門大手予備校です。全国展開していて規模が大きく、関西の4私大医学部医学科合格者数の実績はNo.1です。
メディカルラボの授業は1対1の完全個別授業に加えて、個別オンライン授業も実施しています。オンライン授業はリアルタイムで授業中はいつでも質問でき、通常授業と遜色ないクオリティです。宿題、課題やチェックテストなどはメールやFAX、郵送などで受け渡しします。通学に時間を割く必要がないので、忙しい社会人の再受験生にもおすすめです。